キッチン・風呂・トイレの清掃方法
いずれの場所においても、
をある程度知っていた方が掃除がしやすいと思う。
掃除するものの材質(素材)
キッチンであれば金属、お風呂ならプラスチック、トイレなら陶器が該当する。
具体的には、キッチンのシンクはステンレスが多く、お風呂のユニットバスの湯舟・壁・床タイルはFRP(繊維強化プラスチック)が多く、トイレの便器は陶器(セラミック)、便座はプラスチック(PP)であることが多いです。
金属の特徴と耐性
- ステンレス
- 性状:主成分は鉄、クロムとニッケルが添加され、表面に酸化クロムの薄く透明な保護層があり、銀色の外観
- 酸・アルカリ:弱酸・弱アルカリは問題なし。強酸・強アルカリについても高い耐性を持つ。
- 研磨剤:メラミンは強くこすると傷、コンパウンドは目の細かいものなら。
- アルミ
- 性状:酸化して酸化アルミニウムの透明な保護層があり、銀色の外観
- 酸・アルカリ:強酸・強アルカリに弱い。弱酸には比較的体制があるが長時間は不可。弱アルカリも影響を受ける。
- 研磨剤:メラミンは強くこすると傷、コンパウンドは目の細かいものなら。
プラスチックの特徴と耐性
- ポリエチレン(PE)
- 性状:高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)があり、HDPEはシャンプーや洗剤のボトル、プラスチック玩具、スーパーレジ袋等が該当し、LDPEは食品ラップ、パンの袋、電線被覆等が該当する。
- 酸・アルカリ:多くの酸に対して耐性があります。希釈された酸は問題なく使用できますが、濃硫酸や濃硝酸などの強酸には長時間の接触を避けるべき。強アルカリにも耐性がある。
- 研磨剤:メラミンやコンパウンド等の研磨剤の使用は傷がつく可能性があるので控える。
- ポリプロピレン(PP)
- 性状:ポリプロピレンはマヨネーズボトル、お菓子の袋、テレビ等が該当する。
- 酸・アルカリ:酸に対する耐性は高く、希釈された酸から濃酸まで広範囲の酸に対して使用可能。強アルカリにも耐性がある。
- 研磨剤:PEと同様に研磨剤の使用は傷がつく可能性があるため控える。
- ポリ塩化ビニル=塩ビ(PVC)
- 性状:水道管、電線管などが該当する。
- 酸・アルカリ:希釈された酸から濃酸まで広範囲の酸に対して使用可能。ただし、長時間の接触は避けるべき。強アルカリに対しても良好な耐性。
- 研磨剤:硬いプラスチックなのでメラミンや目が細かいコンパウンドであれば耐えられる。
- ポリエチレンテレフタレート(PET)
- 性状:PETはその名の通りペットボトルをはじめ、食品トレイやクレジットカードなどに使用されている。
- 酸・アルカリ:弱酸には耐性がありますが、強酸や長時間の酸との接触には注意が必要。アルカリに対する耐性は低く、特に高温のアルカリ溶液には影響を受けやすい
- 研磨剤:研磨剤の使用は傷がつく可能性があるため控える。
- ポリカーボネート(PC)
- 性状:ポリカーボネートは 耐衝撃性や透明性を活かして、ヘルメットやゴーグル、家電や自動車部品に使われている。
- 酸・アルカリ:弱酸には耐性がありますが、強酸には影響を受けやすいです。アルカリに対する耐性は低く、特に高温のアルカリ溶液には注意が必要です。
- アクリル(PMMA)
- 性状:透明性と加工性から、絵の具、水槽、食器などに使われている。
- 酸・アルカリ:弱酸には耐性がありますが、強酸には影響を受けやすいです。アルカリに対する耐性は低いです。
- FRP(エフアールピー:Fiber Reinforced Plastic、繊維強化プラスチック)
- 性状:使用される樹脂と強化剤(ガラス繊維やカーボンファイバー)の種類によって耐性は異なる。
- ポリエステル樹脂: 弱酸および弱アルカリに対して耐性がありますが、強酸および強アルカリには弱い。
- ビニルエステル樹脂: 酸およびアルカリに対して良好な耐性を持つ。
- エポキシ樹脂: 酸およびアルカリに対して良好な耐性を持つが、特定の強酸および強アルカリには注意が必要。
- クロスライト(Croslite 特殊な樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合体、EVA樹脂))
- 性状:軽量、クッション性、防臭性、防水性、耐久性を兼ね備えている
- クロックスの汚れの原因が油汚れである可能性は少ないので、汚れを落とすのに洗剤のような酸、アルカリ、塩素類は不要であると思われる。弱アルカリのウルトラハードを試しに使用してみたが、中性洗剤と効果は変わらなかった。 研磨はクロックスがすり減る可能性はあるが、効果はあるので、軽めに使うといい。激落ちくんは靴裏の滑り止めでボロボロになるので、100均の不織布研磨剤がおすすめ 以上のことから、中性洗剤+不織布研磨でこするだけで十分。クレンザーでも界面活性剤が含まれるのでいける。
- 研磨剤:いずれも、強度が強く表面が硬いので、ある程度の研磨には耐えられるが強くこすると傷がつく可能性がある。
- 性状:使用される樹脂と強化剤(ガラス繊維やカーボンファイバー)の種類によって耐性は異なる。
ガラス(鏡含む)の特徴と耐性
- 性状:鏡は表面はガラス(シリカ)だが奥の反射層は銀やアルミニウムで出来ており、裏面を保護層で多いっている構造。
- 酸・アルカリ:表面のガラスのみであれば、弱酸・弱アルカリであれば耐性があるが、奥の反射層の金属は酸やアルカリに弱いため、裏面の保護層が損傷していたり、横から成分が浸透してしまうと反射層が損傷する危険がある。鏡ウロコの原因は炭酸Caや炭酸Mgなので、酸性洗浄剤が効果的
- 研磨剤:研磨剤はなるべく使用しない。メラミン等の細かい研磨剤は初めに目立たない場所でテストしてから使うといい。
陶器(セラミック)の特徴と耐性
- 性状:高温で焼き固められた無機物材料で、非常に硬く、耐久性が高く、絶縁性、耐食性もある。衝撃や引っ張る力に弱く割れやすい。
- 酸・アルカリ:酸に対してもアルカリに対しても耐性がある。
- 研磨剤:多くの研磨剤に耐性があるため、クレンザーやメラミンだけでなくサンドペーパーでも耐えられる。
汚れの原因となる物質
キッチンとお風呂の汚れの原因ほぼ同じで、油汚れ・カビ・水垢・石鹸カスが主体。キッチンの方が油汚れは多く、お風呂の方がカビが多く、鏡もあるため鏡鱗もあり。
トイレの汚れは尿の成分や水垢、カビによるもの。
油汚れ(油脂)
- 性状:皮脂や食品中の油が該当する。
- 酸・アルカリ:油脂は強アルカリ(水酸化Naや水酸化K)によって分解(けん化)されて、脂肪酸塩とグリセリンを生成する。酸によっても加水分解され同じように脂肪酸とグリセリンを生成するがアルカリに比べて反応が遅く、温度や濃度を上げる必要がある。
石鹸カス
- 性状:アルカリ性の石鹸と硬水中のCaやMgが反応して生成される脂肪酸塩で金属石鹸と呼ばれる。脂肪酸のNa塩である石鹸は水溶性にもかかわらず、CaとMg塩は難溶性である。
- 酸・アルカリ:酸に対して分解しやすく、アルカリに対しては簡単に分解されない(高濃度の強アルカリで部分的に分解)。
塩酸(HCl)との反応式は、R-COO-Ca+2HCl+2R-COOH+CaCl2
水垢
- 性状:硬水中のCaやMgが炭酸イオンと結びついて炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを形成したもので水に難溶性。
- 酸・アルカリ:炭酸Caは酸と反応して溶解するが、アルカリには反応しない(高温強アルカリ除く)。
塩酸(HCl)との反応式は、CaCO3+2HCl→CaCl2+CO2+H2O
また、炭酸Ca水中に二酸化炭素が存在すると、CaCO3+CO2+H2O→Ca(HCO3)2の反応により炭酸水素Caの形で溶け込むことが出来る。
鏡ウロコ
- 性状:硬水中のCaイオンと炭酸イオンが蒸発して鏡の表面に残った+炭酸Caが原因
- 酸・アルカリ:水垢と同じで酸で溶かすことができるが、反射層の銀につかないように注意が必要。
黒カビ
- 性状:真菌(カビ)による汚れで、有機物を分解して繁殖する。
- 酸・アルカリ:酸やアルカリはカビにとって生存しづらい環境を作り出すが、カビに対する殺菌効果は酸化剤に比べて低い。
- 酸化剤(漂白剤):次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)や過酸化水素(H2O2)はカビの細胞壁や内部の有機物を酸化することでカビを殺菌することができる。
赤カビ
- 性状:細菌(セラチア・マルッセンス)による赤いバイオフィルム
- 酸・アルカリ:黒カビと同じ
- 酸化剤(漂白剤):黒カビと同じ
尿石
- 性状:尿石の原因にはリン酸Ca、シュウ酸Ca、炭酸Ca、尿酸とその塩がある。どのタイプができやすいかどうかは尿のpHと食事によって異なる。
例えば、尿のpHが低いと尿酸の溶解度が低下するし、pHが高いと他のCa塩の溶解度が低下する。ナッツやほうれん草を沢山食べればシュウ酸Caがでる。(尿路結石の原因) - 酸・アルカリ:リン酸Ca、シュウ酸Ca、炭酸Caの3つはいずれも酸に対して溶解するが、アルカリに対しては溶解しにくい。尿酸の化学式はC5H4N4O3、水に難溶性で、特に酸性条件下で溶解度が低くなるため、アルカリを使う。
- 研磨剤:いずれも研磨剤で削ることが可能。
掃除に使う洗浄剤
酸と塩素系アルカリを混ぜると塩素ガスが発生。塩酸と水酸化Naであれば中和されて塩化Naと水に。
酸
- サンポール・・・酸性。界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニウム塩)、塩酸(9.5%)、洗浄助剤
- 酢・・・弱酸性。CH3COOH
- クエン酸・・・弱酸性。C6H8O7(3価のカルボン酸)
- アズマジック(トイレ洗剤)・・・酸性。界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、塩酸(7.5%)
中性
- バスマジックリン・・・界面活性剤(6%、アルキルベタイン)、泡調整剤、金属封鎖剤、除菌剤、粘度調整剤、安定剤
- トイレマジックリン・・・界面活性剤(3%、アルキルトリメチルアンモニウム塩、金属封鎖剤、粘度調整剤、安定剤
アルカリ
- 重曹(NaHCO3)・・・弱アルカリ
- セスキ炭酸ソーダ(Na2CO3・NaHCO3・2H2O)・・・弱アルカリ性、水に溶けやすい。炭酸Naと重曹の中間に位置する。
アルカリ(界面活性剤入り)
界面活性剤は、天然または合成の様々な化合物から作られます。アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤など、様々な種類がある。
- 石鹸(脂肪酸のNa塩orK塩)・・・製造後も少量の未反応の水酸化Naが残っているため一般にアルカリ性を示す。 石鹸である脂肪酸のNa塩は、油脂(TG)と強塩基(NaOH等)の反応(=けん化)によって、グリセリンとともに生成する。石鹸は界面活性剤の一つで、水中で見せるを形成し、油脂や汚れを囲んで水中に分散させる働きがある。
- ウルトラハードクリーナー(バス用)・・・弱アルカリ性。界面活性剤(2.8%アルキルグルコシド)、溶剤、金属封鎖剤、除菌剤
- ウルトラハードクリーナー(油汚れ用)・・・アルカリ性。水酸化Na(2.5%)、水酸化K(0.8%)、界面活性剤(アルキルベタイン)、溶剤(グリコールエーテル)
- JOY・・・弱アルカリ性。界面活性剤(3.4%、アルキルエーテル硫酸エステルNa、アルキルアミンオキシド)、安定化剤、粘度調整剤
- キレイキレイ(泡)・・・弱アルカリ性。イソプロピルメチルフェノール(抗菌剤)、安息香酸塩(防腐剤)、界面活性剤(ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンK液、ミリスチン酸、モノエタノールアミン、ウリルジメチルアミンオキシド液: )、保湿成分(PG、ソルビット液)、EDTA(キレート剤)、水酸化K、粘度調整剤
- キレイキレイ(液体)・・・弱アルカリ性。泡との大きな違いは、泡立ちをよくする界面活性剤のラウリルジメチルアミンオキシド液が含まれてないこと、増粘剤であるアクリル酸アルキル共重合体エマルション-2が含まれていること、保湿剤の種類が泡はプロピレングリコール、液体はグリセリンであること。
アルカリ(界面活性剤、研磨剤入り)
- クリームクレンザー・・・弱アルカリ性。研磨剤(20%)、界面活性剤(9%直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)、pH調整剤
アルカリ(界面活性剤・次亜塩素酸塩入り)
次亜塩素酸は酸化剤(電子を受け取って自分が酸化される)である。
次亜塩素酸Naは常温で保管されていてもゆっくり分解し、濃度が低下していくので、年数が経っているものは効果が落ちることを知っていなければならない。
次亜塩素酸塩(NaClO)は水に溶かすと次亜塩素酸(HOCl)を生成する。この際に水酸化Naが生成するためアルカリ性になる。(NaClO+H2O→HOCl+NaOH)
この時の次亜塩素酸を安定化させるために、NaOH濃度をやや高めてアルカリ性にしている(カビキラー)。
次亜塩素酸は水中で一部が次亜塩素酸イオン(OCl-)に解離しているが、これも酸化剤である。(HOCl→H++OCl-)
カビのタンパク質中のシステイン残基(R-SH)を酸化してジスルフィド結合を形成することで、タンパク質の構造を変化させて抗菌作用を示す。(R-SH+HOCl→R-S-S-R+H2O)
- ドメスト(トイレ用洗剤)・・・アルカリ性。界面活性剤(アルキルアミンオキシド、ラウリン酸)、水酸化Na(1.4%)、次亜塩素酸塩(約3.8%)、ケイ酸な(キレート剤)。水酸化Naは安定化目的。
- カビキラー・・・アルカリ性。次亜塩素酸Na(約0.5%)、水酸化Na(0.5%)、界面活性剤(アルキルアミンオキシド)、安定化剤。水酸化Naは安定化目的。
- 強力カビハイター・・・成分はカビキラーと同じ。泡の形状だけ異なる。
- キッチンハイター(液体)・・・アルカリ性。次亜塩素酸Na(約6%界面活性剤(アルキルエーテル硫酸エステルNa)、水酸化Na。
薄めて使うため泡ハイターより濃度が濃い。希釈目安は期限新しいものであれば、0.1%にするのに、水3リットルにキャップ約2杯(50ml) - キッチン(泡)ハイター・・・アルカリ性。液体と同じ成分+純石けん分(脂肪酸ナトリウム:界面活性剤作用)。次亜塩素酸Na濃度は約0.6%。
純石けん分がプラスされることで泡立ちがよくなっている。(
カビハイターよりも次亜塩素酸塩濃度は高いが泡ダレがこちらの方が起きやすい(キッチン周り用に横に広がりやすいため、壁などにはカビハイター)
界面活性剤のアルキルアミンオキシドは殺菌効果があり、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(SLES)は脱脂効果があるので、お風呂には前者、キッチンには後者を使う。
掃除に使う機材
- チャンネルブラシ(ステンレス)
- 金だわし(ステンレス)
- アルミネットスポンジ(アルミ)
- 難燃性不織布(換気扇フィルター)
- ゴムスポンジ(ゴムピカ等)
- ウレタンスポンジ
- お掃除用ディスク(インパクトドライバー用)
まとめ
- キッチンのステンレス・・・油脂を分解して剥離できる強アルカリや、油脂をそのまま除去できる界面活性剤、カビがあればそれを除去できる次亜塩素酸塩が適しているので、キッチン泡ハイターやドメストだけでもそこそこ効果はある。
費用的にはウルトラハードクリーナーが高いのでまずは泡ハイター→ついでアルカリ濃度1.4%のドメスト→ウルトラの順
メラミン等研磨剤は不可。 - お風呂のFRP・・・強酸・強アルカリが使える。石鹸カスと水垢は酸で、皮脂はアルカリで、カビは次亜塩素酸塩で行きたいところなので、先にドメストやカビキラー(床ならキッチン泡ハイターでも)できれいにしてから落ちない部分を酸で。それでも無理なら傷覚悟でクレンザーや中性洗剤を塗った後、軽めにステンレスたわしやブラシを使った研磨。
- トイレ・・・陶器部分は酸でもアルカリでもOK。尿石の大部分が酸で溶解するのでまずは酸性洗浄剤(サンポールでもクエン酸でもなんでも)で、無理なら強アルカリで、これでもダメなところをサンドペーパーで研磨。
プラスチック部分は研磨できないので、塩酸入り洗浄剤が第一選択。 - 液体か泡かについて・・・泡タイプのものは、液体タイプのものに泡立ちをよくする界面活性剤を追加で加えていることと、スプレーの出口もメッシュ構造にして空気を取り込みやすいような構造になっており、内容物と容器の相乗効果で泡立ちをよくしている。そのため、界面活性剤のラウリン酸だけしか入っていないようなドメストを泡ハイターの容器に入れても泡ハイターのような泡にはならない。